Long-term effects of school barefoot running program on sprinting biomechanics in children: A case-control study
Mizushima, J., Keogh, J. W. L., Maeda, K., Shibata, A., Kaneko, J., Ohyama-Byun, K., & Ogata, M. (2021).
Gait & Posture, 83, 9–14.
IF:2.349(2019)
選定理由
自身も関わっている、日本国内でのはだし研究が国際誌に掲載されたため
Highlights
Habitual barefoot running children had shorter contact times and longer flight times.
Habitual barefoot running children used a more anterior FSP in shod sprinting.
Habitual barefoot running children jumped higher with shorter contact time.
Longitudinal research is required to confirm the optimal dosage of barefoot running.
https://gyazo.com/efc9a7c76fb9c0bc3827c77c41572729
abst
Background The acute changes of running biomechanics in habitually shod children when running barefoot have been demonstrated. However, the long-term effects of barefoot running on sprinting biomechanics in children is not well understood. Research question How does four years of participation in a daily school barefoot running program influence sprint biomechanics and stretch-shortening cycle jump ability in children? Methods One hundred and one children from barefoot education school (age, 11.2 ± 0.7 years-old) and 93 children from a control school (age, 11.1 ± 0.7 years-old) performed 50 m maximal shod and barefoot sprints and counter movement jump and five repeated-rebound jumping. To analyse sprint kinematics, a high-speed camera (240 fps) was used. In addition, foot strike patterns were evaluated by using three high-speed cameras (300 fps). Jump heights for both jump types and the contact times for the rebound jump were measured using a contact mat system. Two-way mixed ANOVA was used to examine the effect of school factor (barefoot education school vs control school) and footwear factor (barefoot vs shod) on the sprinting biomechanics. Results Sprinting biomechanics in barefoot education school children was characterised by significantly shorter contact times (p = 0.003) and longer flight times (p = 0.005) compared to control school children regardless of footwear condition. In shod sprinting, a greater proportion of barefoot education school children sprinted with a fore-foot or mid-foot strike compared to control school children (p < 0.001). Barefoot education school children also had a significantly higher rebound jump height (p = 0.002) and shorter contact time than control school children (p = 0.001). Significance The results suggest that school-based barefoot running programs may improve aspects of sprint biomechanics and develop the fast stretch-shortening cycle ability in children. In order to confirm this viewpoint, adequately powered randomised controlled trials should be conducted. 背景:裸足で走っているときの習慣的に靴を履いた子供たちの走る生体力学の急激な変化が実証されています。ただし、裸足でのランニングが子供の全力疾走の生体力学に及ぼす長期的な影響はよく理解されていません。リサーチクエスチョン:毎日の学校のベアフットランニングプログラムへの4年間の参加は、スプリントの生体力学と子供のストレッチ短縮サイクルジャンプ能力にどのように影響しますか?方法:裸足教育学校(年齢、11.2±0.7歳)の111人の子供と対照学校(年齢、11.1±0.7歳)の93人の子供が、50 mの最大の靴と裸足のスプリントを行い、カウンタームーブメントジャンプと5回の繰り返しリバウンドジャンプ。スプリントの運動学を分析するために、高速度カメラ(240 fps)が使用されました。さらに、3台の高速度カメラ(300 fps)を使用して、接地パターンを評価しました。両方のジャンプタイプのジャンプ高さとリバウンドジャンプの接触時間は、コンタクトマットシステムを使用して測定されました。双方向混合ANOVAを使用して、スプリントのバイオメカニクスに対する学校要因(裸足教育学校と対照学校)および履物要因(裸足と靴)の影響を調べました。結果:裸足教育の子供たちのスプリントバイオメカニクスは、履物の状態に関係なく、対照の学童と比較して、接地時間が大幅に短く(p = 0.003)、飛行時間が長い(p = 0.005)という特徴がありました。短距離走では、対照の学童と比較して、裸足教育の子供たちの大部分が前足または中足のストライキで全力疾走しました(p <0.001)。裸足教育の子供たちはまた、対照の学校の子供たち(p = 0.001)よりも有意に高いリバウンドジャンプの高さ(p = 0.002)と短い接地時間を持っていました。重要性:結果は、学校ベースのベアフットランニングプログラムがスプリントの生体力学の側面を改善し、子供たちの速い伸張短縮サイクル能力を開発する可能性があることを示唆しています。この観点を確認するために、十分に動力を与えられたランダム化比較試験を実施する必要があります。 Keywords
Intro
1. Introduction
ランニング、特に全力疾走は、子供の運動発達に基本的で重要な高強度の人間の動作である。短距離走は、レクリエーション、スポーツ、職業活動の範囲で高レベルのパフォーマンスに必要な運動技能でもある。子供たちは、複数の内的および外的要因によって影響を受ける神経筋システムと環境の相互作用の結果として運動技能を発達させると考えられている。二足歩行中に地面に触れる身体の唯一の部分が足裏であるため、履物の選択は、人間のランニングのバイオメカニクスに影響を与える外的要因の1つである。
複数の研究により、習慣的に靴を履く子供たちが裸足で走ると、リアフットストライク(RFS)からミッドフットストライク(MFS)またはフォアフットストライク(FFS)へと、ランニングバイオメカニクスの急激な変化が確認されている。 これらのバイオメカニクス的変化、特により前方へのフットストライクパターンを用いることは、スプリントとジャンプで必要とされるスプリント技術と速い伸張短縮サイクル(SSC)パフォーマンスの恒常的な変化につながる可能性がある。 8〜12週間のベアフットランニングプログラムでは、ランニング中の下肢の平均鉛直床反力、負荷率、剛性特性が変化する可能性があり、ジャンプ中にこれらの変化が見られるかどうかを調査する研究は少ない。さらに、子供のランニングやジャンプのバイオメカニクスに対する習慣的な裸足ランニングの影響については、限られた知見しか存在しない。子供を対象とした文献のもう1つの限界は、これまでの研究の大部分が最大以下の走行速度を利用しており、足の接地パターンに焦点を当てた全力疾走のバイオメカニクスを調査した研究は一つしかない。
したがって、このケースコントロール研究の主な目的は、同じ地域で育ったが、ベアフットランニングの経験が異なる子供たちの全力疾走のバイオメカニクスを比較することである。 2つのグループ間で観察された全力疾走パフォーマンスの違いの根底にある潜在的なメカニズムへのより深い洞察を提供するために、時空間変数、接地パターンおよびSSCジャンプ能力を調査した。
Methods
2.1. Study design
ケースコントロール研究のデザインを使用して、同じ日本の都市の裸足教育の小学校(BSグループ)と対照校(CSグループ)に通う子供たちのスプリントバイオメカニクスの潜在的な違いについて調査した。 裸足教育の学校が選ばれたのは、毎日の毎朝、土の屋外トラックを、個人が選択した速度で10分間裸足で走るというユニークな学校の身体活動プログラムを提供しているためである。 対照校は、子供たちが靴を履いてこれらの活動を実施したことを除いて、同じ都市の裸足教育校と同じ身体活動プログラム実施校として選ばれた。 筑波大学倫理委員会がこの研究を承認した(IRB ID:30–110)。
2.2. Participants
参加者の包含基準は、次のものが含まる。1)10〜12歳。 2)BSまたはCSランニングプログラムへの最低4年間の参加。計測日に短距離走のパフォーマンスに影響を与える可能性のある下肢の怪我や病気を患った人は参加する資格がなかった。 BSまたはCSに参加する203人の児童のうち、BSグループの101人の児童(男子54%、女子46%;年齢11.2±0.7歳;身長1.45±0.06m;体重37.0±6.9kg;靴の質量; 0.19±0.03kg)およびCSグループの93人の児童(男子52%、女子48%;年齢11.1±0.7歳;身長1.46±0.07m;体重37.8±7.2kg;靴の質量0.20±0.04 kg)がこの研究に含まれた(回答率96%)。 各学校長と体育教師から承認を得た後、書面によるインフォームド・アセントとコンセントが、すべての参加者とその保護者から取得された。
2.3. Sprinting test
下肢の筋の静的および動的ストレッチ、最大下ランニングドリル、および最大努力での30m走を含む、20分間のウォームアップの後、参加者は、靴と裸足の両方でスタンディングスタートから最大努力50m走を1回試行した。 土の校庭で裸足と靴の間に約15分の休憩があった。 学習や疲労の影響を最小限に抑えるために、ランニング条件は子供ごとにランダム化された。 生態学的妥当性を維持するために、参加者は、通常の走パターンを変えないように、自分で選んだ履物、通常はスポーツシューズを使用した。 スプリントテストのパフォーマンスは、さまざまな時空間変数とそのフットストライクパターンを使用して定量化された(以下で説明)。
https://gyazo.com/5c39bd1469fdd27f589cb79e15546d90
Fig. 1. Experimental setup.
図1に実験装置を示す。 スプリント動作を記録するために、ハイスピードカメラ(LUMIX FZ200、パナソニック、東京、日本、フレームレート:240 fps、シャッタースピード:1/1000)を走路の右端から20m離れたの50m走の中間点(25 m)に配置した。 高ハイスピードカメラの位置は、その光軸が25mマークで移動面に垂直になるように選択された。 走路の両側20〜30mの地点に2メートル間隔で基準マーカーを設定し、体の関節の2次元座標を再構築できるようにした。
23の解剖学的ランドマークと関節中心(第3中手骨骨頭、尺骨の茎状突起、肘、肩(肩甲上腕関節)、母趾、第5中足骨骨頭、踵骨端、足関節(距骨関節)、膝 、大転子、頭頂、耳、および胸骨上端)および走路上の最も近い4つの参照マーカー(両側の前方および後方)を手動でデジタル化した。 このデジタル化プロセスは、動作分析システム(Frame-DIASⅣ、DKH Inc.、東京、日本)を使用して、120Hzで2つのステップ(左足接地から25mマーク付近の同じ足の次の接地まで)で実行された 。
デジタル化されたデータから、スプリントのバイオメカニクス研究で以前に使用された方法を使用して、2次元座標(xおよびy)が再構築された。 座標をデジタル化するための一般的な誤差は、0.001mから0.005mの範囲でした。 解剖学的ランドマークと関節中心の2次元座標は、残差分析によって決定された最適なカットオフ周波数(5.0〜10.0Hz)でButterworth low-passデジタルフィルターを使用して平滑化された。 次に、手、前腕、上腕、足部、下腿、大腿、頭、胴体からなる14のセグメントが日本人の子供たちに定義され、それぞれの重心が平滑化された座標を使用して計算された。 この方法による2D重心測定のテスト-再テストの検者内信頼性を評価するために、同じ研究者が10回のスプリントでこれらの位置を再評価し、変動係数は3%未満だった。これは、文献と同等の結果である。
これらの時空間パラメータはすべて、スプリント研究のために以前に報告された技術を使用して、25m地点で2つの連続したステップにわたって平均された。 具体的には、立脚期は左足または右足のいずれかが地面に接地している期間として定義され、滞空期はどちらの足も地面に接地していない期間として定義された。 ピッチは、1ステップの立脚期の持続時間の逆数として定義され、ストライド長は、各ステップで全身の重心が移動した水平距離として定義された。 走速度は、1ステップの全身の重心の平均水平速度として定義された。
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Fig. 2. Definitions of foot strike patterns. (A) Rear-foot strike (RFS); (B) Mid-foot strike (MFS); (C) Fore-foot strike (FFS).
また、25m地点のフットストライクパターンは、右方向、前方斜め方向と後方斜め方向に配置された3台の高速度カメラ(EX-F1、CASIO、東京、日本、フレームレート:300 fps、シャッタースピード:1/1000)を使用して3つの角度からキャプチャされた。足の接地のすべての画像は、MacBook Pro(Apple Inc.、Cuptertino、CA、USA)のハードディスクにキャプチャされ、処理された(QuickTime Player 7 Pro for Mac、Apple Inc.、Cuptertino、CA、USA)。フットストライクパターンの視覚的分類(図2):RFS(踵が母趾球より前に着地する接地)、MFS(踵と母趾球の同時接地)、およびFFS(足趾の付け根が踵より前に着地する接地)は、お互いの解析結果を知らされていない独立した2人の経験豊富なレビューアによって実行された。参加者のフットストライクパターンの評価の検者間の信頼性は優れており(線形加重カッパ指数=0.946)、必要に応じて3人目の経験豊富なレビューアがコンセンサスに使用された。
2.4. Stretch-shortening cycle (SSC) jump tests
全力疾走テストを行った後、参加者は少なくとも10分間休憩した後、2回のSSCジャンプテスト(カウンタームーブメントジャンプ(CMJ)と5回のリバウンドジャンプ(RJ))を行い、全力疾走テストの靴試行と同じ靴を履いて実施した。これらのジャンプが実行される前に、参加者は、必要なスキルを身に着けるため、最大下で何度か繰り返し練習した。すべてのジャンプは腕を振らず、テスト中は両手を腰に当てた。
これらの2つのジャンプテストは、各ジャンプテスト間に3分間の休憩を入れて実行された。これらのジャンプは、スプリントのバイオメカニクスにおけるグループ間の潜在的な違いに対する視座を提供するための適切なフィールドテストとして選択された。これらのジャンプテストは簡単に実行でき、RJはCMJの低速SSCと比較して足底屈筋群の関与が大きい高速SSCを必要とするため、下肢の力-パワー-速度特性を評価するのに役立つと言われている。
両方のジャンプ計測の跳躍高とRJの接地時間は、標準的な手順を使用して、マットスイッチ(Multi Jump Tester; DKH Co.、Tokyo、Japan)を使用して測定された。このマットスイッチは、ジャンプ時と着地時のオンとオフの信号をミリ秒単位で読み取る。これにより、接地時間、滞空時間、跳躍高の評価において高いレベルの有効性と信頼性があることが実証されている。跳躍高は、得られた滞空時間に基づいて、次の式を用いて計算された。
跳躍高(m)=(9.81 m/s2×滞空時間2)÷8
CMJは、参加者に、最も高く跳ぶように要求し、ジャンプ間に1分間の休憩を入れて2回繰り返した。 CMJは、参加者ができるだけ高くジャンプし、跳躍時と同じ位置に着地するように指示された。 RJは、参加者に5回の繰り返しジャンプを1セット実行するように要求した。これにより、参加者はできるだけ高くジャンプし、できるだけ早く地面を押すように指示された。 最高反応強度指数(RSI)のジャンプ:つまり、最初と最後のジャンプを除いて、跳躍高(m)を接地時間(s)で割った比率が統計分析のために選択された。 パイロット研究を実施し、平均11歳の22人の子供を対象としたジャンプテストのテスト-再テストの検者内信頼性を評価し、ジャンプテスト変数のクラス内相関係数は0.932から0.965の範囲だった。
2.5. Statistical analysis
シャピロウィルク検定の結果に従って正規性の仮定が満たされたため、結果は平均±標準偏差(SD)として表された。二元配置分散分析を主要な統計的検定として使用して、グループの参加者要因間(BSグループとCSグループ)および参加者内の履物試行の要因(靴試行と裸足)の影響を調べた。ボンフェローニ事後検定は、相互作用の影響について実施された。マクネマー検定を使用して、各グループ内の靴試行と裸足のフットストライクパターンの違いを検討し、カイ2乗検定を使用して、各試行のBSグループとCSグループ間のフットストライクパターンの違いを検討した。独立したサンプルのt検定を使用して、BSグループとCSグループの間の身体的特性、靴の質量、およびSSC能力の違いを検討し、95%信頼区間(CI)が報告された。すべての統計手順は、SPSS(SPSS Inc.、USA)for Macバージョン25を使用して実行され、統計的有意差はp<0.05に設定された。
3. Results
3.1. Physical characteristics and shoe mass
表1は、サンプル全体の身体的特性と靴の質量を示している。 BSグループとCSグループ間で、年齢(p=0.635)、身長(p=0.258)、体重(p=0.473)、靴の質量(p=0.346)に有意差はなかった。
Table 1. A summary of the physical characteristics and shoe mass for both groups.
https://gyazo.com/30ae01f64c0410d4a63fa3d372aed299
3.2. Spatio-temporal variables
表2は、サンプル全体の時空間変数を示している。スプリント速度(p<0.001)とステップ長(p<0.001)について、グループと履物試行の間に有意な相互作用があった。BSグループの全力疾走速度は裸足試行の方が靴試行よりも有意に高く(p<0.001)、裸足試行の全力疾走速度はCSグループよりもBSグループの方が有意に高かった(p=0.015)。事後検定では、CSグループのストライド長は裸足試行の方が靴試行よりも有意に短く(p<0.001)、裸足試行でのストライド長はBSグループの方がCSグループよりも有意に長かった(p=0.032)。
接地時間(p=0.003)と滞空時間(p=0.005)に対するグループ間の有意な主効果があり、CSグループよりもBSグループの方が接地時間が大幅に短く滞空時間が長かった。履物は、ピッチ(p <0.001)と接地時間(p <0.001)に大きな影響を及ぼし、裸足試行では、靴試行よりもピッチが大幅に高く、接地時間が短くなった。
A summary of the key spatiotemporal variables for both groups across both footwear conditions.
https://gyazo.com/7bd257231ca19a781dabfbcac47d4c86
3.3. Foot strike patterns
表3は、フットストライクパターンの要約を示している。 カイ二乗検定は、CSグループよりもBSグループのRFSの割合が低く、靴試行(X2(2,N=194)=16.108、p<0.001)での足の接地パターンに対するグループの有意な効果があることを示した。 対照的に、裸足試行のフットストライクパターンに有意差は見られなかった(X2(2、N=194)=5.088、p=0.079)。履物がフットストライクパターンに及ぼす有意な影響が観察され、靴試行ではRFSの割合が高いことが示されたが、BSグループ(p<0.001)とCSグループ(p <0.001)両方で裸足試行では減少した。
Table 3. A summary of the foot strike pattern for both groups across both conditions.
https://gyazo.com/1890a585a9513cfde7a7b43b871ceea4
3.4. Stretch-shortening-cycle jump ability
表4は、サンプル全体のSSCジャンプ能力を示している。 BSグループはCSグループよりもRJ跳躍高が有意に高く(p=0.002)、接地時間が有意に短く(p=0.001)、RSIが有意に高かった(p<0.001)。BSグループとCSグループの間でCMJ跳躍高に有意差は見らなかった(p=0.492)。
Table 4. A summary of the stretch-shortening cycle exercise (SSC) ability for both groups.
https://gyazo.com/a088ea1939b0a084de9fecfbdeb3671c
4. Discussion
本研究の主な知見は、同じ地域で育ったが裸足ランニングの経験が異なる子供たちの間で、全力疾走のバイオメカニクスと高速SSC能力の特徴が異なるということであった。BSグループの子供たちは、毎日10分間、最低4年間の裸足ランニングを遂行したが、接地時間が短く、滞空時間が長く、CSグループの子供よりも高い高速SSC能力で、より前方のストライクパターンを使用してスプリントすることが観察された。
最大走行速度(3.70〜3.98m / s)として定義された速度で、靴と裸足の両方の試行で、靴の子供よりも習慣的に裸足の子どもたちのRFSパターンの割合が高いことが報告されている。しかしながら、我々の結果は、BSグループが靴でもRFSの割合が小さくなる傾向があり、裸足試行でのフットストライクパターンと違いがないことを示した。フットストライクパターンのこれらの研究間の違いについては、いくつかの考えられる説明がある。Hollanderらと本研究の両方が参加者に最大限に走るように求めたが、スプリント速度は本研究のBSグループと比較して習慣的に裸足の子供で比較的遅く(6.09と6.33m / s)、足の接地パターンが、成人ランナーでは5m / sを超える走速度で変化すると言われている。さらに、スプリント速度の研究間の違いは、参加者の年齢の違いに起因する可能性がある(本研究では10〜12歳の範囲で平均11.2歳、Hollanderらは6〜18歳の範囲で平均12.1歳)。考慮すべきもう1つの要因は、両方の研究間の習慣レベルの違いである。 Hollanderらは、裸足質問紙の結果に基づいて、学校やスポーツ中に裸足で過ごす時間の約半分を自宅で裸足で過ごしている南アフリカの裸足の子供たちを調査した。本研究のBSグループは、最低4年間(合計で約130時間)、毎日10分間の校内の裸足ランニングプログラムに参加していたが、これは明らかに南アフリカの子どもたちよりも大幅に少ない。それにもかかわらず、接地パターンの有意な変化は、わずか8〜12週間のトレーニング研究で観察されており、本研究で実施された裸足ランニングの最小130時間未満を含む可能性が高い。 したがって、フットストライクパターン、時空間パラメータ、全体的なSSC能力など、全力疾走のバイオメカニクス的特性に大きな変化をもたらすために必要な、裸足ランニングの最小実施量を構成するものはまだ不明瞭である。
本研究の結果とHollanderらの結果におけるこれらの類似点と相違点に関係なく 、裸足と靴を比較して全力疾走する子供たちの両方のグループで観察された違いは、文献で報告されたものと同様だった。具体的には、靴と比較して裸足で全力疾走する場合、RFSからMFSまたはFFSへの相対的なシフト、BSおよびCSグループでのより短い接地時間およびより高いステップ頻度があった。これらの結果は、スプリント速度(5.48〜5.60m / s)で94人の習慣的に靴を履く子供たちを対象に、水島らによって以前に報告された結果と一致している。 しかし、本研究の結果は、BSグループがストライド長を維持しながら、靴の試行と比較して裸足の試行でより速く走ることができることを示した。また、裸足で走っているときはCSグループがBSグループよりも大幅に遅いことが観察された。これは、裸足で走っているときのCSグループのストライド長の短縮の結果である可能性がある。
裸足試行でのBSグループのより速い走行速度は、着地衝撃と運動量の関係によって説明される可能性がある。具体的には、力積と運動量の関係は、システムの運動量(質量に速度を掛けたもの)を変えるために、力積(力に時間を掛けたもの)が必要であることを示している。 BSグループはCSグループよりも短い接地時間で同等以上の全力疾走速度を達成したため、BSグループの着地衝撃は、地面反力が大きく、および/または接地時のCSグループよりも大きなRFDを特徴とする必要がある。BSグループの校内の裸足ランニングプログラムへの長期参加により、裸足スプリントで地面に向かって/地面から力を伝達および/または受け取るのがより効率的になった可能性があるというこの想定は、SSC能力と/または筋骨格系の一連の適応を反映している可能性がある。このような見解は、CMJの跳躍高に有意差は見られなかったものの、BSグループのRJの跳躍高、RSIが大幅に高く、接地時間がCSグループよりも短いという我々の知見と一致している。RJはCMJのような低速SSCと比較して高速SSCを必要とするため、学校での裸足ランニングプログラムは、BSグループの子供たちの高速SSC能力の向上に選択的に貢献した可能性がある。子供が裸足で走るときにMFSまたはFFSの接地を利用することが多いことを考えると、長期間の裸足ランニングは、下肢の力-パワー-速度関係を強化するため、高速SSCパフォーマンスを改善する刺激として機能する可能性がある(特に足底屈筋群)
我々の結果と新しい文献に基づくと、体育教師やスポーツコーチは、高速SSC能力を向上させるために、すべての体育授業と子供のスポーツプログラムに裸足ランニングの一部を含めることを望むだろう。 このような習慣的な裸足ランニングは、おそらくこれらの構造のより大きな負荷の結果として、土踏まず、足趾の角度、足の柔軟性などの足の特性のさまざまな形態学的適応に寄与する可能性があることも知られている。 今後の研究では、スプリントとSSCの能力を向上させるため、および/または様々な年齢と活動レベルの子供たちに有益な形態的適応をもたらすため、裸足ランニングの最小/最適な実施量を確認し、これをどのように進めることができるかを確認する必要がある。
研究デザインにはまだ多くの限界があった。 子供たちが靴の試行で自分の靴を使用したため、靴の試行の結果は、グループ間のクッション性、柔軟性、かかとからつま先までのドロップなどの靴特性の参加者間の違いが影響を受けた可能性がある。 さらに、この研究の参加者の習慣レベルを確認するための、裸足ランニング質問紙を使用しなかった。 さらに、50mコース全体の全力疾走タイムを評価するための光電管は利用できなかった。
5. Conclusion
結論として、本研究の結果は、校内での裸足ランニングプログラムへの参加が、子供の全力疾走のバイオメカニクスとジャンプ能力に及ぼす長期的な影響を示している。 具体的には、BSグループは、より前方のフットストライクパターンを採用し、裸足試行の全力疾走での接地時間の短縮とより速い走速度、およびRJパフォーマンスの向上によって示されるように、より高い高速SSC能力を備えていた。 子どもの習慣的な裸足ランニングと全力疾走の前向きな適応と潜在的なリスクをよりよく理解し、この集団で裸足ランニングを開始および進めるための最善の方法を定量化する必要があることは明らかである。 コホートまたはランダム化比較試験のデザインを含む縦断的研究は、裸足ランニングの肯定的な結果と潜在的な怪我のリスク、および様々な年齢と身体活動レベルの子供たちでこれを進める最善の方法に関する詳細情報を提供するのに役立つ。
総評:
水島先生の以前の研究では、最近の靴に慣れた子どもは裸足になると速く走れないという結果であり、自分たちが幼少期に経験していた「かけっこは裸足」の身体性が失われつつあることに危機感を抱いていた。今回の結果は裸足で上手く走れる子どもたちがまだ国内にいることを一部であるが客観的に示すことができた。日本のはだし教育を世界に向けて発信する良い機会となった。